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機械設計講座:機械設計者のための覚え書き
慣性モーメントの計算例
0. 概要
今回の記事は、
・実際に慣性モーメントを計算してみる。
・例題を通して慣性モーメントの使い方を見てみる
・減速した場合の慣性モーメントは何故 I/i2 の説明です。

円盤形状の慣性モーメントの求め方だけは理解して欲しいところですが、ざっくりと読んで概念だけ理解されれば結構かと思います。
1.0 解説

 慣性モーメントについて、何となくは分かるけど実際にはどうやって計算するの?と言う疑問があるのではないでしょうか?
そこで、具体例の説明の前に数学的に(ほんの少しだけ)厳密な説明を最初にしておきます。(面倒な人は飛ばして読んで下さい)
図1を見て下さい。これは厚みを持った円板の場合を想定しています。
図1 回転中心からr離れたところに質点dmがあるのが分かりますね。
では、dmとはどれくらいの量なのでしょう?
rの距離離れて、微小角dθなのですから、

    dm = r・dθ・dr・ρ・t

で表せます。ここでρは比重(または密度)、tは厚みです。
すると、慣性モーメントIは、Σ(m・r2)だと説明してきましたが、これを積分式で表すと、

    I=∫r2・dm

          R   2π
      =∫  ∫    r2・r dθ・dr・ρ・t
          0   0
で表されますね。これを整理すると、
                 R        2π            R4
    I=ρ・t・∫ r3 dr∫  dθ=ρ・t×―×2π
                 0        0              4
                        R2      R2
      =ρ・t・π・R2×― = M・― -----------------------(1)
                        2       2
        \__________/
              M
となります。これが円盤形状の中心軸回りの慣性モーメント2 です。
例えばプーリーとか歯車なんかはこの式で求められます。

ところで前回、減速比 2 の減速機を介している場合、モーター軸換算では慣性モーメントが I/i22 になると説明しました。何故そうなるのでしょう?
回転運動している物体の回転エネルギーは、

         I・ω2
    E=―――― 
            2
でした。で、エネルギーは一定ですから、モータ軸のエネルギーと減速後のエネルギーも同じ物です。すると、IMをモーター軸換算の慣性モーメントとして、
        IM・ω2    I      ω       I   ω2 
    E=―――― =――・(――)2=――・――
           2        2       i        i2    2
となり、結局IMは、 I/i2 になるわけです。

さて、こんな面倒な数式ばかり説明していても全然設計には役に立たないじゃないかと思われると困りますので、もう一寸実用的な説明もしましょう。

[例題]

図2の様な直径2mのプーリーにロープが巻き付けてあり、その端には質量1kgの錘がぶら下がっている。
これを静止状態から1秒間で1m上昇させるにはどれだけのトルクがモーターには必要か?
ただし、プーリーは中実一様断面形状でその質量は10[kg]、モーター本体のモーター軸の慣性モーメント
 IM = 1 [kgm2]とする。
図2

計算例:

必要なトルクは、錘を上に持ち上げるトルクT1とプーリーを加速するのに必要なトルクT2の和と考えられます。

さて、最初にT2を求めることにします。
トルクは慣性モーメントに角加速度を掛けたものでした。ですから、まず角加速度を求めることにしましょう。

周速は角速度に半径を掛けたものです。
そして周速0から周速Xに等加速度運動をしながら1秒間で1m上昇したのですから、平均周速度は1[m/s]ですね。

するとXというのは2[m/s]であるというのは分かりますね?(注1)
そうすると加速度は2[m/s2]であるのも分かりますね。(1秒間に0から2に速度が増えたのだから)
じゃ、角加速度は半径が1mですから割り算すると2[rad/s2]ですよね。

結局プーリーの加速に必要なトルクは、
T2=(IM+IP)×2[kg・m2/s2](注2)
となります。(IP:プーリーの慣性モーメント)

ではIPはいくらでしょうか?
上の(1)式より、
IP=M・R2/2=10×1/2=5[kgm2]
です。 結局、
T2=(5+1)×2=12[kg・m2/s2]
となります。
次にT1の計算です。(単位系の違いで混同しないように注意)

錘が静止している時の重力加速度による下向きの力は質量1kgに9.8m/s2の加速度を掛けたもの、すなわち9.8Nです。

更に、上向きに質量1kgの物体が2[m/s2]の加速度(上のT2を求める時の説明より)で移動しますから、必要なトルクは腕の長さ1mを掛けたものとして、
T1=(9.8+2)×1=11.8[N・m]
なんだ、T2とT1の単位が違うではないかと思われかもしれませんが、1N=1kg・m/s2ですから同じ事だと分かりますね。
結局、
T=T2+T1=12+11.8=23.8[N・m]
であることが分かります。
参考までにこれを重量単位で表すと、
T=2.43[kgf・m]
になります。以上おわかりになりましたでしょうか?

注1:
周速Xが2 [m/s]となる理由
等加速度運動ですから、平均速度をVm、初速V0、終速V1とすると
Vm = (V0 + V1) / 2 ----------------(1)
変形して
V1 = 2×Vm - V0 ------------------(2)
となります。ここで平均速度をVm=1、初速V0=0、終速V1=Xですから、結局
X=2 [m/s]
となります。
注2:
(IM + IP)X2 のX2の意味
この2は、前の説明で求めた角加速度=2[rad/s2]です。
蛇足ながら周速をV、半径をr、角速度をωとすると
V = r×ω -----------------------(3)
変形すると
ω = V / r ----------------------(4)
です。周速度が 0 から 2 m/sに増えたのですから、
角速度も 0 から 2 [rad/s]に増えていますよね?
r = 1ですから、(4)式より求まります。
で、角速度が 1 秒間で 0 から 2 に増えたのですから、
角加速度は 2 [rad/s2]になるわけです。
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(13 Nov.2007)誤記訂正、説明追加
(28 Mar.2006)注記追加
(10 Oct.1998)

[参考文献]:  社刊「   」(    著)
copyright(c) 2011-  orbit limited.

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