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機械設計講座:機械設計者のための覚え書き
集積公差について
0. 概要

昔、ある製品の設計をやっていた時に、工場からこんなクレームが来たことがあります。

「この図面じゃ、公差を累積すると隙間がなくなる。もっと公差を拡げないと駄目だ。」
はて?と思って図面を見たら大体こんなものでした。
ある溝の中に板厚同一の板が5枚入って動くものなのです。
板は基準寸法に対しプラスマイナス0.05の公差なのですが、最悪プラス0.05のものが入ってきた時、0.05×5=0.25になる、と言うのです。だからその溝は少なくとも羽根の板厚かける枚数+0.25以上の寸法になっていないといけない、工場側はそう主張していました。
これは本当でしょうか?

それでは、もっと一般化して色んな公差の部品が累積したとき、全てプラス側を足さないといけないのでしょうか?
逆にマイナス側が揃ってきたとき、ガタはどうなるのでしょうか?

今回の記事は少しわかりにくいですが、1.2 項の(1)(2)式があるということを覚えておいて下さい。

もう少し頑張って、1.3 項の赤字の部分だけ知識として頭の片隅に置いておけばよいかと思います。
1.0 解説
この様に部品の公差が累積する場合の公差を「集積公差」とか「累積公差」と言います。
さて、公差とはなんでしょう?
これはあくまで「この範囲内に収まるように部品を作ってくださいよ」という要望にすぎません。
もしかしたら、この公差はとても簡単な要求で、「部品のばらつき」はもっと小さいかもしれません。
逆にもっとばらつきが大きくて、この公差に納めるには全数検査して選別納入しているかもしれません。
ですから、単純には推定は出来ない事がわかると思います。 ですので、以下の様に場合を分けて説明します。

1.1 中央値が呼び寸法で、公差(例えば±0.05)が±3σと一致する場合(正規分布)
注. 3σ には特別な意味はありません。ただ、正規分布する母集団の場合、中央値 ±3σ の範囲に入る確率は 99.74% であると言われていますから、危険率 1% で公差内に含まれると見なせます。ですので公差を 3σ であると仮定するだけのことです。もしもっと大きく 6σ だとすれば確実に範囲に入っているはずです。
補足:平均値が中央に一致してかつ正規分布に従うと仮定するならば、6σの外に出る確率は、10億分の2、すなわち0.002ppmであると言われています。つまり、ある工程では 10億個製品を加工しても 2個の規格外(不良品)しか発生しないと「みなしてよい」と言うことになります。

余談になりますが、最近話題の「シックス・シグマ」における 6σは 3.4ppm であり、その数値に差があることに注意して下さい。
この違いは簡単に言うと、サンプリングされた各データの平均値の揺らぎ(時間の経過によっておきる)は一般的に1.5σであるという定説によるもので、結局シグマ・レベルが4.5σに等しい、とする考えによるものです。
スミマセン、全くの余談でした。

この場合、上記の様にn枚重ねた場合の寸法公差は以下の通りになります。
n個積み上げた場合の標準偏差を σ' とすると、

σ' = σ×√n -------------------(0)
だから、
公差(3σ') = 3×(σ×√n)
つまり、累積公差は寸法公差に個数の平方根を掛けたものになります。
例えば上記の部品5枚なら、
公差 = 0.05×√5 ≒ 0.11
となります。
但し、 ±3σ と仮定していますから、危険率は1%であることに注意して下さい。
また、平均値の変動(揺らぎ)が当然起こりえますから、あくまで考え方の説明としてご理解願います。
実際には、製品の平均値のバラツキがいくらで標準偏差がいくらなのかは調査が必要です。それによって危険率も違ってきます。

補足説明:一寸わかりにくい説明かと思いますがご容赦。
上記の推定方法は、SRSS(Sqaure Root Sum of Squares)法と言われています。

統計学で教わることですが、正規分布での分散の加法定理は、

Var[z] = Var[x1] + Var[x2] ---------------(h0)

ですよね?
この式は2変数( x1 と x2 )ですが、変数を n 変数に拡張し、

Z = X1 + X2 + X3 +・・・+ Xn 

とおくと、

分散 Var[z] は、

Var[z] = Var[x1] + Var[x2] +・・+ Var[xn] --------(h1)

が得られます。
z の標準偏差を σz とおき、かつ xj の標準偏差を σxj ( j = 1 〜 n )とすると

σz = √( Var[z] )
   = √( σx12 + σx22 +・・+ σxn2 )

σz = Square-Root [ Σ { j = 1 to n, Square ( σxj ) }]
   = SRSS [ σxj ]
 ---------------------------(h2)

となり、式の体は名を表していますね。
もちろん以上の変形には
統計的に独立、
正規分布である
などの条件が課せられることになるのは当然。
これらの条件から外れると式(2)は近似式となり、課される精度によって適用範囲に制限を受けることになります。

上記の説明に倣って、以下では Wi の二乗和平方根 √(Wi2) のことを SRSS(Wi)と記す事とします。

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1.2 上記1の条件が保証できないが、確かに寸法値は公差内に入っていることだけは確かな場合 (注1)
一般に各部品の寸法公差が Wiの場合の集積公差をWとすると、

W = k × SRSS(Wi) ---------------------------(1)
ここで k は係数で、
k = 2ΣWi / { Wimax + ΣWi } ----------(2)
      W−−−−−−集積部の公差
      Wi−−−−−−各部品の公差
      Wimax−−−−各部品の公差の内最大のもの
となると言われています。
特別な場合として、各部の公差が同じで個数 N 個の時は、上の式を変形して、 
  W = k×Wi×√(N) -------------------------(1)’
ここで 
  k = 2×N / ( 1 + N ) -----------------(2)’
となりますね。(下記、1.3の記事 C を参照願います)
概略計算としては、
  W = 2×Wi×√( N )  -------------------(1)”
でも大体の見当がつきます。
これは、 k は1〜2の間に収まるのが普通なので、最悪値として 2 なら問題ないとしての計算です。(安全側での計算)
各部の公差の差が大きい場合は k は 1 に近づきます。

さて、前出のクレームですが、(2)’式より、
k = 2 × 5 / ( 1 + 5 ) = 1.667
(1)’式より、
W = 1.667 × 0.05 × 2.236 = 0.186
±0.186程度となります。決して±0.25ではありません。

大差ないじゃないか、と思われますか?

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1.3 読者からのメール紹介
*匿名希望の読者から下記の様なメールを頂きましたので紹介します。こちらの説明の方が実務的で分かりやすいかも知れませんね。
おそらく工場などで品質管理の実務を経験された方なのかな?と思われます。
差し出し元メールアドレスが一時的なものでしたので返信が出来ませんでした。
ですので転載に対しての了承を頂いていませんが、メール内容から判断して積極的に転載を希望されてるものと解釈しました。問題あれば連絡を下さい。

<転載開始:転載に際し、改行や文字使いなどを一部変更し、強調文字は私が追加しました。また明らかな誤記と思われる部分は訂正しました>
各寸法公差を Wi とし、その累積寸法公差を W とする。
標準偏差を Si 、分散を Vi 、和の分散を V 、和の標準偏差を S とすると、

S = √V = √之i = √(Si2)

が成り立つ。

Si ∝ Wi と期待されるので

W = K×√(Wi2) と推定できる。

√(Wi2) のことを Wi の二乗和平方根(SRSS:Square Root Sum of Squares)と呼ぶ。

累積公差は、基本は最大最小値で計算するが、 遊びが問題になる場合 K×SRSS(Wi) で計算する。

K をどの程度にするかは、公差 Wi に対し実際の分布をどう管理するかという問題なので、 本来なら製造と設計の合意事項であるべきと思う。

@ W = 埜i ・・・ 最大最小値を計算する方法

A K = 1 ・・・・ 標準偏差がWi/3の正規分布(Cp=1で3シグマが公差内)の和の分布の3シグマという考え方

B K = √3 ・・・ 一様分布(Cp=0の広がった分布の一部を選別した最悪の分布)の和の分布の3シグマという考え方

C K = (埜i + 埜i) / (Wmax + 埜i) ・・・ 1≦K<2

D K = 2

E K = {埜i + √(Wi2)} / {√(Wi2) + √(Wi2)} ・・・ 偏りが Wi/2 で標準偏差が Wi/6 の正規分布(Cp=2で3シグマが公差内)の和の分布の3シグマという考え方

Wi=1 に単位化して N 個の和を考える。
横軸 N 、縦軸 K にして見比べると分り易い。

@ K = √N ・・・ 絶対大丈夫

A K = 1 ・・・ 基本式だが偏りの余地が無い

B K = √3 ・・・ このくらいなら製造も合意する

C K = (N+N) / (1+N) ・・・ N=1 のとき K=1 であり N=∞ のとき K=2 に漸近 (@、Bに近似)

D K = 2 ・・・ 実用的に十二分

E K = (N+1) / (1+1)  (計算が合わないので訂正)
  K = (N+√N) / (√N+√N)  ・・・ 統計的に充分 (@、Aの中間)

公差に入ったところで切削をやめるので削らない側に分布が偏る。
無人連続加工では工具磨耗を見込むので削りこむ側に分布が偏る。
素材寸法は材料節約のため下限狙いとなっているものが多い。
分布の偏りを容認するためには K > 1 とする必要がある。

K = 1 とするのは( K を大きくすることの裏返しで)公差を実質半分で管理することを要求しているのと同義なので製造が同意できないが、一様分布なら同意できるだろう。
C は N < 10 では@ とB を滑らかに結んでいる。

@ なら絶対大丈夫だがEで充分と考えられる。
補足:N=9の時、@ ならばK=3、E ならばK=2。
   N=25の時、@ ならばK=5、E ならばK=3 となります。
N <= 3では @ を計算するのが素直だと思う。

D は N < 10 では @ と E の間になっている。
K = 2 くらいあれば標準偏差が Wi / 6 程度の工程能力 ( Cp=2 ) のとき 平均値の偏りを Wi/2 程度まで容認できる。

同じ板を100枚重ねる場合のように偏りが累積し易い状況では E とするべきだろう。

K = 1 は基本的な考え方を示しているだけであり実用上は NG 。
実際は K = 1.7〜2.0 程度が望ましい
運が悪いときでも無理して組めばいいのなら K = 1.5 まで容認できると思う。
B は旧電電公社が示したと聞いているが定かではない。

C は雑誌に載っていたような気がする。

C の妥当性は上記で示せたと思うが、導出方法は知らない。
「K = 1 は NG」と明記して欲しい。

<転載終了>
補足:
上記転載文章中にある Cp とは工程能力指数を指していると思われます。
工程能力指数とは?の説明は例えば>こちら<をご覧下さい。

簡単に説明すると、
寸法値などの観測値が正規分布している状態の工程において、その工程の持つ品質達成能力を「工程能力」とします。
次に、その工程能力を数値化する訳ですが、
 「ある特性において規格幅を6σで割った値」
で定義される値を「工程能力指数」と定義したと考えて下さい。

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注1.
これらの式は私の技術ノートに残して有ったもので、現在元になった参考資料が不明です。
誰に教わったのだろうか?
偉そうな事を書いていながら、駄目ですね。
どなたか、「お前が参考にした本はこれだろう」など、なんでも構いませんので情報をお待ちしています。
(2 Mar. 2001 初出)
(26 Oct. 2003 加筆)
(26 Apr. 2009 加筆)
(31 Jan. 2013 訂正、加筆)Eの計算が合わないので、私が訂正しました。また一部加筆しました。


[参考文献]:  社刊「   」(    著)
copyright(c) 2011-  orbit limited.

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